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恐ろしい【総絞りの振袖】のお話。

恐ろしい【総絞りの振袖】のお話。

2024/11/18

恐ろしい【総絞りの振袖】のお話。
長いから興味ある人だけ読んで(笑)

私が大島紬も好きだけど、絞りの着物も大好き。
どちらも、尋常じゃない時間と手間をかけて丁寧につくる芸術品なの。
近年、インクジェットでプリントする振袖が7割を占める中、1枚の総絞りの振袖を作るのに2年半くらいかかるのよ。

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絞りとは。
生地を糸や板などで括るなどして、その部分を染まらないように防染して染めることにより、多彩な柄を出現させる技法。

着物の全身が、なんらかの絞りの技法で埋め尽くされてるものを「総絞り」という。

絞りの技法の中でも、写真のようにタコのイボみたいなのがぎっしり見えるものを「疋田絞り」という。

一粒の直径5ミリぐらい。
振袖の反物って15メートルぐらい。疋田の総絞りだとその中にこの粒が15〜20万粒あるの。

作り方はね、指で米つぶほどの大きさに生地をつまんで、さらに指先で四つに畳んで、そこにお蚕さんの吐いたまま(つまり、よってない糸)の22本の糸を4回〜12回巻きつけて縛る。。。写真みてね。
という、気の遠くなる作業を、一日300粒、2年間するの。
2年間、同じ職人さんが、毎日、粒々を縛るのよ。
力の入れ具合とかそれぞれ個々に違うから、同じ種類の絞りは、1人の人が全部やるの。
  
※娘の着物は、疋田絞りの他に、赤や緑や黒のところは、ビニールで小さな帽子みたいなのをかぶせて縛って防染する「帽子絞り」と、疋田絞りほどギュウギュウではなく2回だけ巻く「一目絞り」という技法も施されてる。
すべて、絞りの技法によって、専門の職人さんがその部分を担当する。

15メートルの反物が、縛られて括られて、クシュクシュに小さくなる。

そして染める。

その染め方も、なかなか色々大変なんだか、そこは端折る。

染め終えたら、縛ってあった糸を、ブチブチブチってちぎる。そうすると、糸で防染したところが白くて、そこからはみ出ていた粒々のてっぺんが、点に染まって、粒と粒の間の谷の部分も染まって、写真のような模様ができるの。

この着物は、そうやって一度、黒で染めて、そのあとさらに紫で染めてるね。

ブチブチブチって縛ってあった糸をちぎって、白い綺麗な柄が出てきても、まだこれでは生地は縮こまったまま。
なので、着物を仕立てる反物の幅に戻すべく、湯のしといって、裏から蒸気をあてながら、人の手で伸ばしていく。
伸ばしすぎると、せっかくの絞りのイボイボ感がなくなってしまう。適度に凸凸してるのが絞りの魅力。

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「本疋田絞りと、疋田絞り」、さらに、「刷り疋田や、絞り風」について。

写真でわかると思うけど、真っ白の薔薇のところと、グレーの薔薇のところがあるでしょ。

真っ白に見える薔薇の部分は「本疋田絞り」といって、疋田絞りのなかでも9〜12回巻きつける高等な技法。つまり染まる部分が少ない。点も小さいし谷も少ない。粒々の間隔も狭い。
グレーに見えるところは、普通の疋田絞り。

本疋田絞りができる職人さんはほとんどいなくなって、最近の振袖は、本疋田はあまり見かけない。
あっても、娘の着物のように、柄の一部分だけ本疋田で、あとは普通の疋田絞りや、ちがう絞り技法のものが多いと思う。
松たか子さんがアカデミー賞かなんかで着た着物が全身本疋田づくめだと話題だった。全身が本疋田だと800万円ぐらいかも。

間隔が大きくても、巻きの数が少なくても、絞ってあるなら、まあ、絞りには違いないから「疋田絞り」を名乗っていいのだけど、腹が立つのが、「疋田絞り柄」とか「疋田絞り風」を「疋田絞り」と言ってる店。
疋田絞りだけではない。絞りと名乗って、ただそんな風に見える柄を印刷してるだけのものを、平気で「絞り」って言う。レンガ柄の壁紙と同じ。レンガではない!

「刷り疋田」とか、疋田柄とか言う分には、レンガ柄みたいなものだから、いいと思うよ。そういうデザインはたくさんあるよ。それはそれ。

あと、無地の部分はまったく絞ってなくて、裾の模様のところだけしか絞ってないのに、「総絞り」っていうお店もある。総絞りは、全身絞ってないと、総絞りではない。

職人さんが2年も3年もかけて作ったものと、インクジェットでプリントしたものを同じ言い方するのは、失礼だよねえ。

てなわけで、ママの「絞りの着物愛」でした。
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